ここにたどり着いた読者なら、「筋トレが大事」であることは理解してるだろう。筋トレ、もとい運動は心身に対して様々な好循環を生み出し、また骨粗鬆症や様々な生活習慣病の予防、テストステロンをはじめとするホルモン分泌を促す作用がある。
ではなぜこのような作用が発生するのか。その一つの答えが今回の「マイオカイン」だ。マイオカインとは骨格筋(筋肉)から分泌されるホルモンやペプチドなどの物質の総称で、発見されてから日が浅く未だ研究途中の仮説である。
今回はこの「マイオカイン」について、その効果や効能、筋トレをはじめとした増やし方について解説していこう。
マイオカインとは?その効能と作用
マイオカインって何?
マイオカインとは、骨格筋(筋肉)から分泌されるホルモンやペプチドなどの物質の総称だ。これらはホルモンの一種であり、筋肉そのものだけでなく、全身の臓器や組織に影響を及ぼす。
特に、脂肪代謝や抗炎症作用、インスリン感受性の向上など、多岐にわたる健康効果が期待されている。運動、特に筋トレを行うことで、マイオカインの分泌が促進されることとが分かっている。
マイオカインの主な機能と働き
マイオカインの主な働きをあげる。
代謝の改善により痩せやすくなる
代表的なマイオカインに「IL-6(インターロイキン6)」があり、炎症を抑えるだけでなく、代謝を活性化する作用がある。代謝とは普段からとる食べ物をエネルギーや身体を作るために分解や合成をする身体の機能だ。
「IL-6(インターロイキン6)」によって脂肪分解が促進されたり、血糖値が調整される。結果痩せやすくなったり、生活習慣病が予防される。血管の老化を防ぎ動脈硬化などを予防するマイオカインもある。
筋肉を増やす
マイオカインは筋肉の合成や修復に影響する。筋肉が取り込むタンパク質(アミノ酸)の合成や、筋トレ後の修復に必要な糖の取り込みを促進するマイオカインも発見されている。※2‐3
アルツハイマー病の予防
アルツハイマー病はアミロイドβと呼ばれる脳内タンパク質が蓄積し、脳神経を死滅させることで起こる脳機能障害だが、マイオカインの一種であるイシリンは、この蓄積を抑制する効果がある。※4
ボケないためにも運動・筋トレが重要ということだ。
その他にも骨密度の増大※5や免疫力強化を促すマイオカインなど、本当に様々な効果があるのだ。
マイオカインの増やし方
マイオカインに様々な健康効果があることは理解できた。ではどうやってマイオカインを増やしたらよいだろうか。結論を言えば、運動習慣は必須だ。特に筋トレを強く推奨する。
筋トレがマイオカインに与える影響
マイオカインは骨格筋から分泌されるが、運動をすることで分泌される「運動誘発性」であることが多い。また運動強度が強ければ強いほど、分泌されることも研究データで出ている。※6
つまり筋トレのような高強度のトレーニングは、マイオカインの分泌には有効ということになる。また筋肉量が多いほどマイオカインの分泌量は増大するため、筋トレによる筋肥大・筋力増加が効果的である。
マイオカインは発見されてから20年程度と、まだ研究の日は浅い。これから研究が進むことでマイオカインの効果効能が更に見つかっていくだろう。また将来的には、マイオカイン自体を効率的に外から取り込むなどのソリューションが生み出されるかもしれない。
それでも筋トレは重要だ。筋トレ自体には男性ホルモンであるテストステロンや成長ホルモンの分泌など、マイオカインとも関連する様々な効果がある。この記事でマイオカインについて理解が進み、筋トレなどの運動習慣を取り入れるきっかけになれば幸いである。
関連記事:
※1:Pedersen BK et al., “Muscle as an endocrine organ: Focus on muscle-derived interleukin-6,” Physiological Reviews, 2008】。
※2:Ahsan M, Garneau L, Aguer C. The bidirectional relationship between AMPK pathway activation and myokine secretion in skeletal muscle: How it affects energy metabolism. Front Physiol. 2022 Nov 21;13:1040809. doi: 10.3389/fphys.2022.1040809. PMID: 36479347; PMCID: PMC9721351.
※3:Sato K, Iemitsu M, Matsutani K, Kurihara T, Hamaoka T, Fujita S. Resistance training restores muscle sex steroid hormone steroidogenesis in older men. FASEB J. 2014 Apr;28(4):1891-7. doi: 10.1096/fj.13-245480. Epub 2014 Jan 17. PMID: 24443372.
※4:Eunhee Kim 1, Hyeonwoo Kim 2, Mark P Jedrychowski 3, Grisilda Bakiasi 1, Joseph Park 1, Jane Kruskop 1, Younjung Choi 1, Sang Su Kwak 1, Luisa Quinti 1, Doo Yeon Kim 1, Christiane D Wrann 4, Bruce M Spiegelman 3, Rudolph E Tanzi 5, Se Hoon Choi 6 Irisin reduces amyloid-β by inducing the release of neprilysin from astrocytes following downregulation of ERK-STAT3 signaling.Neuron
. 2023 Nov 15;111(22):3619-3633.e8. doi: 10.1016/j.neuron.2023.08.012. Epub 2023 Sep 8.PMID: 37689059 PMCID: PMC10840702 (available on 2024-11-15)
※5:Kirk B, Feehan J, Lombardi G, Duque G. Muscle, Bone, and Fat Crosstalk: the Biological Role of Myokines, Osteokines, and Adipokines. Curr Osteoporos Rep. 2020 Aug;18(4):388-400. doi: 10.1007/s11914-020-00599-y. PMID: 32529456.
※6:Archundia-Herrera C, Macias-Cervantes M, Ruiz-Muñoz B, Vargas-Ortiz K, Kornhauser C, Perez-Vazquez V. Muscle irisin response to aerobic vs HIIT in overweight female adolescents. Diabetol Metab Syndr. 2017 Dec 28;9:101. doi: 10.1186/s13098-017-0302-5. PMID: 29299068; PMCID: PMC5746008.